元の投稿者：Sander Lutz、 Decrypt

原文翻訳：Felix、PANews

先週末、近年で最大の賭博スキャンダルの一つがスポーツ界を揺るがす中、プロリーグとスポーツブックは急成長する予想市場を受け入れると約束し、その組み合わせが予測可能な結果をもたらすのかどうかという疑問が浮上している。

10月23日、NBAポートランド・トレイルブレイザーズのヘッドコーチ、チャウンシー・ビラップスとマイアミ・ヒートのガード、テリー・ロジアーが、スポーツ賭博に影響を与えるために試合結果を操作するなど、違法賭博行為の連邦捜査で逮捕された。

ちょうどその前日、ナショナルホッケーリーグ（NHL）は、メジャースポーツリーグとして初めて予測市場とのライセンス契約を締結し、歴史に名を残しました。予測市場は、従来のスポーツベッティングにおいて話題を呼んだ新しい人気のベッティングプラットフォームですが、法的にはグレーゾーンに位置しています。同日、米国で最も人気のあるスポーツベッティングサイトの一つであるドラフトキングスが予測市場企業を買収し、この新興分野への強力な参入を果たしました。

現在、連邦法執行機関がスポーツ賭博におけるインサイダー取引に焦点を当てているため、一部の専門家はスポーツ賭博が予測市場に移行することに対してますます懸念を抱いている一方で、これらの賭博プラットフォームはパブリックブロックチェーンネットワークを利用することで透明性が向上すると考える専門家もいる。

元政府規制当局者や法律専門家は、予測市場への移行により、ただでさえ困難なスポーツ賭博の規制作業がさらに困難になり、スポーツ関連賭博における不適切な行為が増加する可能性があると述べている。

先物契約を通じてイベントの結果に金銭的な利益を得られる予測市場は、商品先物取引委員会（CFTC）によって規制されている。CFTCはプロスポーツの監督経験がほとんどない連邦規制当局である。50年の歴史の大部分において、同委員会は大豆や家畜の先物といった農産物デリバティブ取引を受動的に監督してきた。

現在、同局は、主にドナルド・トランプ政権の要請を受けて、急速に拡大しているスポーツ予想市場だけでなく、ほとんどの暗号通貨も規制する態勢を整えている。

匿名の元CFTC職員は、同機関は他の金融規制当局に比べて規模がはるかに小さいだけでなく、今年大幅な人員削減を実施しており、両業界を同時に規制することはおろか、仮想通貨業界やスポーツ賭博業界の両方を規制することさえ不可能だと語った。

「CFTCは吸収合併されると思います。予測市場におけるインサイダー取引は、CFTCが取り締まっていないため、ますます増えるでしょう。CFTCには、自力でインサイダー取引を摘発できる人員が足りないのです。」

規制当局は、その規模と歴史的な使命から、監督対象市場における不正行為の根絶を主に内部告発者と市場参加者による積極的な報告に依存しています。インサイダー取引の積極的な捜査は行っていません。特にスポーツ市場においては、人員と資金を大幅に増強しなければ、インサイダー取引の捜査は不可能です。

こうした変化はすぐには起こりそうにありません。今年、CFTCの幹部は、機関の規模を恒久的に縮小する取り組みを進めてきました。今月初め、トランプ大統領がCFTCの幹部に指名したブライアン・クインテンツ氏は、仮想通貨業界の幹部であるタイラー・ウィンクルボス氏とキャメロン・ウィンクルボス氏との対立により、夏の間、立候補を保留しました。2人は、CFTCの予算増額を含むクインテンツ氏の計画の多くに強く反対していました。

億万長者の双子の兄弟（タイラー・ウィンクルボス）は、当局の規制権限を拡大すると「規制の捕獲」（PANews 注：政治腐敗の一形態）につながると考えている。

ギャンブルおよびスポーツ賭博法の専門家であるダニエル・ウォラック氏は、CFTCのスポーツ賭博市場規制能力は、既存の州レベルのスポーツ賭博規制と比較して不十分であると述べた。州法では、関係者に対し、インサイダー取引に積極的に対処し、法執行機関や第三者の健全性監視企業と協力することを義務付けている。

「対照的に、CFTC（米国商品先物取引委員会）には、この種の活動を規制するスポーツ関連の規制がありません」と彼は述べた。「これらの企業は、実質的に自社のイベント契約だけでなく、自らの誠実性についても自主規制しているのです。」

予測ビジネスは過去1年間で急成長を遂げました。予測市場では、スポーツや政治から暗号通貨や文化イベントまで、ほぼあらゆるものに金銭的な賭けをすることができます。先週の月曜日には、業界最大手の4つの予測市場（Kalshi、Polymarket、Limitless、Myriad）の週間取引高が20億ドルという記録的な額に達しました。

頻繁に引用されるCertuityのレポートでは、予測市場は2035年までに産業として955億ドル規模に達し、年平均成長率46.8%で成長すると予測されています。現在、PolymarketとKalshiは約96%の市場シェアを占めており、最近の資金調達ラウンドでは両社の評価額はそれぞれ90億ドルと50億ドルに達しています。

現在、米国最大のスポーツ予測市場であるKalshiは、CFTC（米国商品先物取引委員会）の要件を満たすため、疑わしい取引行為を特定するシステムを構築しました。同社の広報担当者は、信頼性監視会社であるIC360と提携していると述べました。

広報担当者は「インサイダー取引は有害な行為であり、カルシでは明確に禁止されている」と付け加えた。

しかし、法律専門家のダニエル・ウォラック氏は、米国CFTCがスポーツ市場に対する規制のアプローチを調整しようとしていないため、カルシのような企業は事実上放置され、従来のスポーツ賭博の現状とは全く対照的に、プラットフォームと規制当局の間の力関係が変化していると考えている。

「これらの営利企業は規制の真空状態の中で事業を展開しており、この分野での取引能力に何の制約も制限もないまま、独自の方針を定めている」と同氏は述べた。「八百長やインサイダー取引はスポーツの黎明期から存在しており、これらの企業に責任を負わせるルールは存在しない。」

予測市場を研究する著名な学者たちは、これらのプラットフォームはインサイダー取引を抑制できないだけでなく、原理的にはそれを支援するように設計されていると指摘する。ジョージ・メイソン大学教授であり、米国における予測市場の権威として認められているロビン・ハンソン氏は、昨年10月のインタビューで次のように述べている。「予測市場の目的が価格に関する正確な情報を得ることであるならば、たとえ他の人が賭けに出ることを躊躇するとしても、インサイダー取引を許可することは間違いなく望ましい。しかし、そうすることで価格の精度は向上する。」

予測市場はスポーツ賭博の不正行為を規制する上で新たな課題をもたらす可能性がある一方で、インサイダー取引に対抗する新たな機会も提供すると主張する人もいる。

カルシは日常業務で暗号通貨を使用していないが、主な競合企業であるポリマーケットは使用しており、支持者たちは暗号通貨への依存が透明性の向上につながると主張している。

予測市場で情報の検証や賭けの決済に使われるオラクルネットワーク、レッドストーンの共同設立者、マルチン・カズミエルチャク氏は、ポリマーケットのようなプラットフォーム上のすべての取引はブロックチェーン台帳で公開されるため、疑わしい取引活動の特定が容易になると述べた。

「この透明性だけではインサイダー取引を根絶することはできませんが、従来のシステムでは対応できない規模とスピードでの検出が可能になります。」

コインベースの最高法務責任者ポール・グレワル氏は、先週のNBA賭博スキャンダルのような犯罪を防ぐのに、従来のギャンブルプラットフォームよりもオンチェーン予測市場の方が効果的かもしれないと示唆した。

実際、ここ数ヶ月、Polymarketでは不審なタイミングで行われた取引が複数確認されています。特に今月初めには、同サイトのユーザーがノーベル賞受賞者を数時間前に正確に予想していたとみられ、ノルウェー当局が内部調査を開始しました。

しかし、このインサイダー取引が発覚した後も、ポリマーケットはノーベル賞市場に関する独自の調査を発表せず、インサイダー取引を非難する声明も出さなかった。

代わりに、ポリマーケットのアカウントXは、この状況に関するニュース記事をリツイートし、潜在的なスキャンダルを利用して自社製品を宣伝した。

「最新ニュース：ノーベル平和賞財団内では、ノーベル平和賞受賞者が発表される前にそのことを知っていたのはわずか5人だったが、『ポリマーケット』では全員が事前に知っていたことが明らかになった。」

ポリマーケットは、米国CFTC規制に従わなかったため2022年に海外移転を余儀なくされた後、すぐに米国で再スタートを切る予定だ。

カルシとポリマーケットは、インサイダー取引に関する公的な立場は若干異なりますが、現在の米国政治のエコシステムにおいては同様の立場を占めています。両社とも、大統領の息子であるドナルド・トランプ・ジュニア氏を顧問に迎えています。