原題：デジタル資産：ERC-8004と機械経済の台頭

フィンテック・ブループリントのローレンス・スミスによる投稿

原文翻訳: Peggy, BlockBeats

編集者注：AIとブロックチェーンの融合が進む中、ERC-8004のリリースは、マシンエコノミーが「信頼の時代」へと突入することを意味します。Ethereum FoundationのdAIチームとConsenSysが主導し、MetaMask、Google、Coinbaseといった主要組織と連携したこのプロトコルは、AIエージェントにオンチェーンID、レピュテーション、検証メカニズムを初めて提供し、自律型ソフトウェアの長年にわたる孤立を打破します。

この記事では、ERC-8004がどのようにオープンなエージェント発見・コラボレーション基盤を構築するのかを深く掘り下げ、TempoやThinking Machinesといった新興AI暗号エコシステムにおけるその可能性を探ります。すでに100以上のチームがERC-8004上で構築を進めており、ERC-8004は技術標準としてだけでなく、マシンエコノミーにおける信頼の基盤にもなりつつあります。

以下は元の内容です。

ERC-8004: AIエージェントの信頼を確立するためのプロトコル標準

先週、イーサリアム財団のDAIチームとコンセンシスは、AIエージェントが相互に発見、検証、取引を行うことを可能にするプロトコルであるERC-8004プロトコルをリリースしました。署名企業には、MetaMask、イーサリアム財団、Google、Coinbase、EigenLayer、ENS、The Graphなどが名を連ねています。

これまで、ロボット、モデル、スマートコントラクトなどの自律ソフトウェアは、それぞれ独立して動作していました。A2A（Agent-to-Agent）やMCP（Model Context Protocol）といったフレームワークの登場により、エージェント間の通信が可能になりました。

A2Aは、ソフトウェアエージェントが構造化されたメッセージを送信するための共通言語を提供します。一方、AnthropicがリリースしたMCPは、AIモデル間のコンテキスト交換とタスク調整を可能にします。どちらも相互運用性を促進しますが、「信頼」メカニズムがまだ欠けています。つまり、エージェントの真のアイデンティティ、記録の信頼性、出力の検証可能性を判断することができません。

ERC-8004 は、オンチェーン ID、レピュテーション、検証メカニズムを通じてこの問題を解決する、中立的なオンチェーン レジストリのセットを導入します。

各エージェントは、ポータブルなオンチェーンID（ERC-721トークン、マシンを表すNFT）を受け取ります。このトークンは、エージェントの名前、スキル、ウォレット、エンドポイントを記述したレジストリファイルを参照します。標準化され、中立的なインフラストラクチャに基づいているため、あらゆるマーケットプレイスやブラウザでインデックスできます。

エージェントは互いにフィードバックを残し、タスクごとにタグ付けし、それを経済的支払証明（x402 – EIP-402の略で、オンチェーンの支払いをオフチェーンのやり取りに結び付ける暗号化された領収書）にリンクさせることができます。より信頼性の高いユースケースでは、バリデーターはハードウェアゾーン、プルーフオブステークメカニズム、またはzkML検証を通じて出力を確認できます。つまり、これは自律エージェントのためのオープンな評価および監査レイヤーです。

この標準は、マシンツーマシンの経済活動の基盤を築きます。人間の仲介者を介さない世界を構築し、エージェントが交渉、取引、そしてコラボレーションにおいて互いに信頼関係を築くことを可能にします。これは、通貨と契約の分野におけるブロックチェーンの仲介排除ロジックの延長であり、AIエージェント間のプラットフォーム上の仲介者を排除するものです。

これまでのところ、100 を超えるチームがこの仕様に従って構築しているとのことです。

AIと暗号インフラへの巨額投資

ERC-8004のリリースは、AI経済インフラへの大規模な投資が進む時期に行われました。決済に特化したレイヤー1ブロックチェーンであるTempoは最近、評価額50億ドルで5億ドルを調達しました。また、元OpenAI幹部によって設立されたAIスタートアップであるThinking Machinesは、評価額120億ドルで20億ドルを確保しました。

AIと暗号通貨分野では史上最大の資金調達ラウンドが起こっています。

Tempoは、ステーブルコインと現実世界の金融に最適化されたクローズド決済ネットワークを構築しています。これは本質的に、Ethereumのビジョンである、高スループットで低手数料のグローバル取引決済チャネルのエンタープライズ版です。Tempoの世界では、エージェントは機械並みの速度で決済を処理できますが、その処理はバリデータと手数料モデルによって管理されるプライベートエコシステム内で行われます。

ERC-8004は、このエコシステムにオープンなディスカバリーおよびレピュテーションレイヤーを提供します。どのエージェントや加盟店と取引できるかを定義する代わりに、TempoはERC-8004レジストリを統合することで、公開されたオンチェーンIDを持つ検証済みのエージェントであれば誰でも決済ネットワークにアクセスできるようになります。これにより、Tempoは閉鎖的な決済レイヤーから、より広範なEthereumエージェントエコノミーと相互運用可能なプログラム可能なレイヤーへと進化します。

Thinking Machinesはより高度なレベルに位置付けられています。その目標はまだ明確ではありませんが、既存の製品はモデルの学習を通して回復力と柔軟性を高めることに重点を置いています。これは、インターネット上で推論、協働、そして取引を行う自律エージェントの導入に役立ちます。現在、これらのエージェントは閉鎖された垂直統合された環境に存在しています。

ERC-8004を採用することで、Thinking Machinesはオープンエコノミー向けのトレーニングツールを構築できます。各モデルまたはエージェントはオンチェーン上で発見・検証可能であり、ERC-721 IDトークンを持ち、x402で検証されたインタラクションを通じて現実世界での評判を確立します。実際には、Thinking MachinesのエージェントはEthereum上のデータプロバイダーエージェントと契約し、Tempoなどのチェーンを介して支払いを行い、人間の介入なしに結果をチェーンに送り返すことができます。

つまり、ERC-8004はプログラム可能な市場を解き放ちます。自律エージェントが契約に署名し、取引を決済し、オンチェーン上で評判を築くことを可能にします。まさにこれこそが、DeFiを人類にとって有用なものにしているのです。

フィンテックにとって、短期的な影響は小さく、APIをプロキシに一夜にして置き換える企業はほとんどありません。しかし、プロキシが本人確認、信用力、支払いを証明できるようになれば、プラットフォームを介さずに信用スコアリングから取引実行まで、幅広いタスクを処理できるようになります。

オリジナルリンク