アニー・マッサ、ザカリー・R・ミダー（ブルームバーグ）

原文翻訳：ルフィ、フォーサイトニュース

トランプタワー・ニューヨークの最新テナントの一つは、新興投資銀行のドミナリ・ホールディングス社だ。同社はトランプ・オーガニゼーション本社の2階下に位置しており、ドミナリ社のカイル・ウール社長は、この近さを誇りにしている。

ウール氏は長年にわたりトランプ一家との関係を積極的に築いてきた。昨年の選挙以降、大統領の二人の息子とトランプ・オーガニゼーションの幹部数名の財務顧問を務め、一連の高収益取引の促進に協力してきた。

22階と23階にある、洗練された輝きを放つドミナリのオフィスは、かつてトミー・ヒルフィガー一族のオフィスでした。7月のある午後、エントランスのテレビではFox Businessチャンネルが放映され、近くの棚には法人顧客への融資成功を記念した透明なトロフィーが飾られていました。これらの顧客のほとんどは有名企業ではありません。ドミナリは中小型企業への融資を専門としています。これらの企業は上場企業ではありますが、時価総額は小さく、株価は変動が大きく、収益予想よりも市場心理に左右されます。だからこそ、ウールとトランプ一族のパートナーシップがこれほど実りあるものになっているのです。

トランプ氏の名前：小型株人気の原動力

トランプ氏の名前は、株式市場愛好家が渇望する熱狂をまさに生み出す。例えば、オーランドに拠点を置く赤字のドローン会社、アンユージュアル・マシーンズ社を例に挙げてみよう。2024年の大統領選挙から3週間後、ウール社が仲介役を務め、ドナルド・トランプ・ジュニア氏が有償アドバイザー兼投資家として就任するというニュースが報じられた。証券報告書によると、同社の株価は3日間で3倍以上に上昇し、大統領の長男に440万ドルの帳簿上の利益をもたらした。

それ以来、トランプ一族をこれまで知られていなかった株式に結び付け、その結果生じる露出を利用して株価を吊り上げるという、同様の協力関係が次々と生まれている。

トランプ大統領の息子が顧問に就任したことで、アンユージュアル・マシーンズ、ドミナリ・ホールディングスの株価が急騰

そうしたパートナーシップの一つに、ドミナリ社自身も関わっています。今年2月、同社はドナルド・トランプ・ジュニア氏とエリック・トランプ氏がアドバイザー兼投資家として、他のどの外部投資家よりも大きな株式を保有すると発表した。発表では、彼らの父であるトランプ大統領については触れられず、2人が人工知能とデータセンターの分野でコンサルティングサービスを提供するとだけ述べられていた。しかし、2人にはこれらの分野での経験がほとんどないように見えた。にもかかわらず、ドミナリ社の株価は急騰し、ウール氏とトランプ兄弟は数百万ドルもの富を得た。

10月9日時点で、トランプ兄弟のドミナリ株の価値は1,700万ドル以上だった。ドミナリが設立を支援したビットコイン採掘会社におけるエリックの株の価値は約5億ドルで、トランプ家の基準から見ても巨額の富だ。

トランプ・オーガニゼーションの広報担当者は、エリック・ジュニア氏とドナルド・ジュニア氏へのインタビュー要請には応じなかった。2月、トランプ兄弟がドミナリのアドバイザーに任命された後、ウール氏はインタビューで彼らを優れたビジネスマンと評したが、本記事へのコメントは拒否した。ドミナリは、ブルームバーグ・ビジネスウィークの報道の概要を受け取った後、「不正確な点や誤解が含まれている」と述べたが、具体的な問題については言及せず、幹部へのインタビューも行わなかった。ホワイトハウスもコメント要請には応じなかった。

8月にニューヨークのナスダック証券取引所の外にいるエリックとドナルド・ジュニア

ドミナリのパートナーシップモデルは、トランプ家の名声を収益化する伝統に新たな展開を見せる。トランプ・オーガニゼーションの不動産事業は、建設プロジェクトのみに注力していた時代から、トランプブランドの権利販売へと大きく転換してきた。ウールや小型株との提携、そして最近の仮想通貨への進出は、いずれも名声を富に変える試みと言えるだろう。

「マイクロキャップ企業の特徴は、常に注目を集めようとしていることだ」と、昨年数ヶ月ドミナリで勤務し、『マイクロキャップ・マジック：聞いたことのない株に隠された最大のリターン』の著者でもあるスティーブン・カン氏は述べた。「トランプ一家と関係があることで、彼らは注目を集めているのだ」

他の大統領一族にとって、マイクロキャップ株への投資は、投資家に損失をもたらしてきた長年の実績を考えると、評判リスクと見なされるかもしれない。ウォーレン・バフェットがかつて言ったように、アメリカの資本主義がカジノを備えた大聖堂だとすれば、マイクロキャップはルーレットやスロットマシンのようなものだ。

ドミナリのIPOの約半数は、中国本土または香港に本社を置く小規模企業であり、これらのセクターは価格変動や詐欺が特に発生しやすい。このエコシステムは、手っ取り早く儲けたいと熱望する小規模投資家がマイクロキャップ株に群がることで支えられている。そして今、ウール氏の働きかけにより、米国ファーストファミリーもその仲間入りを果たした。

こうした協力関係には、利益相反の危険性も潜んでいます。トランプ政権の最初の任期中、利益相反に関する世間の監視は、主にトランプ一族の不動産プロジェクトに集中していました。ロビイストや外国政府関係者がイベントの開催やトランプホテルの客室予約を通じて、間接的に大統領の利益を増大させる可能性があったからです。

この任期中、トランプ家の事業はメディア、携帯電話、暗号通貨など、さらに多様化しました。エリックとドナルド・ジュニアは自分たちは個人事業主だと主張していますが、父親のアメリカ大統領としての政策は、彼らが取引する企業に必然的に影響を及ぼします。ドミナリは、こうした新たな機会を一族にもたらすパイプ役となり、公式の決定がトランプ家の富を膨らませる可能性を著しく高めています。

カイル・ウール：ニューヨークの田舎出身のネットワークオペレーター

ウール氏はニューヨーク州北部の人口約5000人の田舎町、キャンドーで育った。大学卒業後、証券会社に入り、すぐにオッペンハイマーやモルガン・スタンレーといった金融機関で富裕層の資産運用に携わるようになった。顧客には、韓国人プロゴルファー、タイムシェア王（彼の9万平方フィートの邸宅は2012年の映画『ベルサイユの女王』に登場した）、そして当時副大統領だったジョー・バイデン氏の息子、ハンター・バイデン氏が共同所有する企業などが含まれていた。

仕事自体は特に目立ったものではなかったが、ウールは他の面で際立っていた。友人と共にファッション雑誌に登場し、16万5000ドル相当の時計を披露したり、セルビア王室と親交を深め、国内の人道支援活動に協力したりした。

2018年10月、ウールはセルビアのアレクサンダー皇太子とともにリードクランツ財団の毎年恒例のチャリティー昼食会に出席した。

2022年、ウール氏はニューヨークの小規模証券会社、リビア・セキュリティーズの社長に就任した。同社はマイクロキャップ株（一般的に時価総額2億5000万ドル未満の企業と定義され、規制当局は投資家に対し、リスクが高く詐欺に遭いやすいと警告することが多い）への融資を専門としている。彼の顧客には、ファッション雑誌で共に記事を書いた友人で弁護士のアンソニー・ヘイズ氏も含まれていた。

当時、ヘイズはナスダック上場企業のCEOを務めていました。同社は食品甘味料や農薬から特許訴訟や抗がん剤に至るまで、絶え間ない変革期にあり、数千万ドルの損失を積み重ねていました。ウールの提案により、同社は再び投資銀行へと転換し、社名をラテン語で「支配」を意味する「ドミナリ」に変更しました。元同僚によると、ウールはこの言葉を非常に気に入っていたそうです。「彼は『私は支配する、私は支配する、私は支配する』と何度も言っていたそうです。」その後まもなく、ウールはドミナリの社長兼証券部門の責任者に任命されました。

ウール氏と仕事をしていた2人の人物によると、同時に彼はトランプ家との関係を本格的に築き始めたという。彼は会社の本社をトランプタワーに移転し、トランプ氏の所有する不動産に時間と資金を投資した。フロリダ州ジュピターにあるトランプ・クラブの会員になり（入会金は現在50万ドル）、トランプ氏の別のゴルフコースでイベントを企画した。その後まもなく、トランプ氏の息子たちやトランプ・オーガニゼーションの他の幹部らと、個人的な資金調達活動を始めた。

「ドミナリはこれまで多くの機会をもたらしてくれました。その多くは信じられないほどの成功を収めました」と、エリック氏は今年4月に仮想通貨メディアFintech.TVのインタビューで語った。「彼らを見るたびに、とても興奮しています。」

トランプ兄弟：紛争回避から自由へ

トランプ・オーガニゼーションのエグゼクティブ・バイスプレジデントとして、エリック氏は家業の日常業務を統括しています。ドナルド・ジュニア氏もエグゼクティブ・バイスプレジデントを務めていますが、MAGA（Make America Great Again）のメディアキャンペーンにより積極的に取り組んでいます。二人とも、父の最初の任期中は利益相反を回避するために海外の新規不動産プロジェクトを断念したにもかかわらず、批判にさらされたと不満を漏らしています。「2016年はあらゆることを正しく行おうと努力しましたが、ほとんど評価されませんでした」とエリック氏は昨年ウォール・ストリート・ジャーナル紙に語っています。しかし今回は、彼らが直面する制約は大幅に少なくなっています。

トランプ兄弟同様、ウール氏もニューヨークとフロリダのMAGA（先進国多元主義者）居住区を頻繁に行き来しており、FOXビジネスに頻繁に出演する彼の日焼けした肌を見ればそれがよく分かる。オールバックの髪は、1980年代のウォール街のエリート層が「宇宙を支配していた」というイメージを彷彿とさせる。番組では、彼は常に主流の投資用語（AI関連株が人気、株価は上昇するだろうなど）を並べ立て、トランプ大統領を称賛している。

かつてドミナリで働いていたマイクロキャップ専門家のカン氏は、ウール氏を「とても社交的な人物」と評し、酒と冗談を楽しみながらも勤勉で、会社の成長に全力を尽くした人物だとした。アンユージュアル・マシーンズのCEO、アラン・エバンズ氏は、「彼は仕事に全力を尽くす、典型的なニューヨークの銀行家でした。仕事があれば、土日も、たとえ午前2時でも仕事をこなしていました」とコメントした。

ウール社は長年にわたり、金融取引業規制機構（FinRA）から顧客からの苦情を5件受けており、資金が不適切な投資に投資されたことや、ウール社が無許可の取引を行っていたことなどが主張されています。これらの苦情のうち2件は却下され、2件は和解が成立しましたが、1件は係争中です。ウール社は不正行為を否定しており、2月のインタビューでは、これらの苦情は業界用語であり、「この業界で長年働いてきた以上、避けられないこと」だと述べています。

オーランドのUnusual Machinesストアにいるエヴァンス

珍しい機械のトランプ効果

アンユージュアル・マシーンズのオフィスは、オーランドの工業地帯にある倉庫のJルームにあります。記者が6月下旬に訪れた際、同社は採用ラッシュの真っ最中で、新しいデスクやワークステーションがオフィスを埋め尽くし、機材の箱が積み重なっていました。当時、従業員は20人未満で、その大半は小売部門で勤務し、主に中国から輸入したドローンの部品を愛好家に販売していました。しかし、エバンズCEOは従業員数を2倍以上に増やし、部品を自社製造する工場を開設し、産業部門や政府請負部門で新規顧客を獲得する計画を立てていました。

荷積み場の近くで、従業員が同社最小の製品、パン一枚より少し大きい、ブンブンと音を立てる四角い白いドローンを飛ばし、空中で転がった。今年初め、エバンズ氏がマール・アー・ラーゴを訪れた際、ドナルド・ジュニア氏が同様のドローンを宴会場で飛ばし、その性能を披露していた。「彼はかなり上手に飛ばしていました」とエバンズ氏は語った。

ドナルド・ジュニアがいなければ、同社の将来ははるかに暗いものになっていたかもしれない。アンユージュアル・マシーンズは見捨てられた事業としてスタートした。昨年、元オーナーは軍需品販売に注力し、消費者向け事業を売却することを決定し、ウールの支援を受けて1株4ドルで上場した。しかし、投資家の反応は芳しくなく、株価は2ドルを割り込むまで急落し、同社は資金を浪費し続けた。

Unusual Machines で作業員がドローンの部品を組み立てている。

ウール氏が資金調達に奔走していた際、彼はドナルド・ジュニア氏にこの株式を勧めた。エバンズ氏によると、大統領の息子であるドナルド・ジュニア氏は興味をそそられたという。パイロット免許を持ち、深海漁業でのドローン活用経験もあるドナルド・ジュニア氏は、株式とワラントを合わせて10万ドルで購入し、最終的にアドバイザーとして契約することに同意した。

ドナルド・ジュニア氏の入社が昨年11月に発表された後、同社の株価は20ドルを超え、同氏の投資額は30倍に増加しました。ドナルド・ジュニア氏はアンユージュアル・マシーンズの役員または取締役ではないため、株式の売買時期と金額を開示する必要はありません。しかし、エバンス氏はドナルド・ジュニア氏がその後の資金調達ラウンドでも投資を継続したと述べています。

マイクロキャップ市場では、「注目を集める発表で株価が急騰し、その後インサイダーによる売りが起こり、株価が急落する」ことは珍しくありません。しかし、エバンズ氏は、自社ではそうではないと述べています。「もしパンプ・アンド・ダンピング（価格操作）をしていたとしたら、株価が20ドルに達した時に資金を調達するか、売却するでしょう。しかし実際には、資金調達のたびに私は買い、売却したことは一度もありません。私たちのチームは、この会社の将来を信じているのです。」

国内製造に進出するアンユージュアル・マシーンズは、世界最大のドローン製造国である中国に警戒感を抱く政府機関や民間企業の需要に賭ける、数十社に及ぶアメリカのスタートアップ企業の一つだ。競合他社の中には潤沢な資金を持つ企業や貴重な特許を持つ企業もあるが、アンユージュアル・マシーンズはドナルド・トランプ・ジュニア氏という優位性を持つ。しかし、エバンズ氏はホワイトハウスへのロビー活動や国防総省関係者への取り入りは行っていないと述べている。「ドナルド・ジュニア氏は私よりもマクロトレンドの感覚に優れています。イーロン・マスク氏のプライベートジェットで彼とランチをすれば、自動化の将来像がはるかによく分かります」（エバンズ氏は、マスク氏がホワイトハウスと公然と対立する数日前にこの発言をした）。

エバンズ氏は、ドナルド・ジュニア氏の最大の貢献は、同社を公に支持してくれたことだと考えている。彼は、潜在的なビジネスパートナーとの面談が容易になり、同社は今年、投資家から8000万ドル以上を調達したと述べている。「このつながりだけでも、私たちの信頼性が高まり、他社との差別化につながります。まるでオプラがウェイト・ウォッチャーズの役員に就任したようなものです。オプラは何をしたかったのでしょうか？ほとんど何もしなかったでしょう。」

アメリカのビットコインの5億ドルの財産

ウール氏はまた、アメリカン・ビットコインを通じてトランプ一家が莫大な仮想通貨資産を築くのを手助けした。トランプ政権の第2期中、二人の息子は様々な仮想通貨プロジェクトに関わり、業界カンファレンスでそれらを宣伝するために世界中を飛び回り、父親の仮想通貨支持の姿勢を強く訴えた。

今年初め、トランプ兄弟はウール、ドミナリ、その他と提携し、テキサス州、ニューヨーク州、カナダのアルバータ州に鉱山を持つ既存のビットコインマイニング企業の株式20%を取得しました。その後、同社は中堅企業との合併を通じて上場し、社名をアメリカン・ビットコインに変更しました。

5月、トランプ兄弟はラスベガスで開催されたビットコイン業界最大のカンファレンスに出席し、同社の将来性をアピールするとともに、仮想通貨を支援するという父のビジョンへの共感を強調した。エリックはステージ上で、「この業界を愛し、100%支援してくれる大統領がいます。私たち家族はこの会社とその将来に非常に期待しています」と述べた。

この取引はウールに大きな利益をもたらした。10月9日時点で、ドミナリの持ち分は1億5000万ドル以上、エリックの持ち分は4億5000万ドル近くになった。

「アメリカン・ビットコインを心から誇りに思います」とエリック氏はテキストメッセージで述べた。「素晴らしい成功でした」。ドミナリとの関係における他の側面についての質問には回答せず、アメリカン・ビットコインも別途コメント要請に応じなかった。

トランプ兄弟のドミナリ関連取引における保有資産の価値

利益相反はどこにでもある

ドローンと同様に、仮想通貨分野でも利益相反は明白です。トランプ兄弟の投資が政策決定に影響を与えたという証拠はありませんが、これらの企業の価値は政府の行動次第で上昇することも下落することも考えられます。7月、ホワイトハウスは内国歳入庁（IRS）に対し、長年施行されている仮想通貨マイニングに関する税制ガイドラインの見直しを検討するよう勧告しました。これは仮想通貨業界が長年求めてきたものであり、American Bitcoinのような企業にとって有益なものとなるでしょう。

一方、同社のマイニングコンピューターは中国に拠点を置くメーカーによって製造されている。最近、共和党議員が米国財務省に対し、国家安全保障上の理由からこうした輸入品の審査を要請したが、その決定権はトランプ政権にある。

ドローン分野では、トランプ政権もバイデン政権からの超党派の取り組みを引き継ぎ、国内生産を推進しています。6月には、トランプ大統領は長年待ち望まれていた飛行規則の導入を加速させる大統領令に署名し、7月には国防総省が米国製ドローンの調達を加速させるためのガイダンスを発表しました。これらの取り組みはいずれも、今年に入って米国のドローン関連企業の株価を押し上げています。

ウール社とトランプ兄弟の協力は、利益相反の問題によって阻まれてはいない。8月、彼らは最新のベンチャー企業、ブランクチェック・カンパニー（特別買収会社）、ニュー・アメリカ・アクイジションIコーポレーションを設立した。この会社は株式市場で資金調達を行い、トランプ氏の「メイド・イン・アメリカ」構想に沿って、地元の製造業者を買収する予定だ。

トランプ兄弟はパートタイムのアドバイザーとして、IPO後に最大5,000万ドルの価値を持つ可能性のある同社の株式を受け取る予定です。証券提出書類において、ニュー・アメリカ・アクイジションは、補助金、税額控除、政府契約、優先購入プログラムなど、連邦または州の優遇措置の恩恵を受けられる買収対象企業を模索すると表明していました。しかし、AP通信がこの件について問い合わせた後、同社はこの記述を削除しました。弁護士は「提出書類の誤り」によるものだと説明しています。ニュー・アメリカ・アクイジションはコメント要請に応じませんでした。

ドミナリの IPO 論争: 成功と失敗

ドミナリの幹部は、同社の迅速な取引ペースに満足感を示した。6月の株主への書簡で、ヘイズCEOは「会社の成果を非常に誇りに思う」と述べ、収益の伸びと株価の上昇を後押しした。これは、当時トランプ・オーガニゼーションの幹部（ドナルド・ジュニア、エリック、そして比較的無名のベテランであるローレンス・グリック、アラン・ガーテン、ロナルド・リーバーマン）のみで構成されていた諮問委員会の功績だとした。

ヘイズ氏はまた、ドミナリの最近のIPO12件を高く評価した。その中には、フロリダ州で2つのゴルフコースを運営する企業と香港で道路建設を行う企業のIPOも含まれている。同氏は「一部のメディアは、当社の最近のIPOについて、クライアントの質が低いと不当に報じている。当社は、こうした報道には強く異議を唱える」と述べている。

確かに、アンユージュアル・マシーンズのように投資家に大きなリターンをもたらした投資もあるが、ヘイズ氏が挙げた12件の案件のうち5件は惨憺たる結果に終わり、上場後に株価はほぼ半減した。「トランプ一家はドミナリが上場を支援した企業のほとんどとは何の関係もなかった」としながらも、ウール氏のリーダーシップの下、これらのIPOは同社の事業の重要な部分を占めるようになった。

ヘイズ氏が推奨した12件のIPOの中には、わずか7人の従業員を抱える香港のマーケティング会社、エバーブライト・デジタル・ホールディング社が含まれていた。同社はメタバースへの深い関与を売りにしていた。ドミナリはエバーブライトのナスダック上場を支援し、4月に株価を4ドルに設定したものの、投資家の反応は冷淡だった。6月には取引量が急増し、株価は6ドルを超えた。

この急騰は、オンラインの銘柄選定クラブが牽引したものだ。人気が高まっているこれらのクラブには、いわゆる「専門家」が参加しており、彼らはしばしばアメリカ人ファンドマネージャーを装い、ソーシャルメディアプラットフォーム上でアメリカ人投資家に手っ取り早く利益を得るために株式購入を勧めている。カリフォルニア州フレズノ在住の31歳の自動車整備士、アルトショム・エフレメンカ氏は、かつてインスタントメッセージアプリ「Viber」の銘柄選定クラブに参加したことがあるという。クラブのリーダーである「ミスター・ジェームズ」という男性は、利益の出る銘柄を推奨してきた経歴を持っていた。そのため、ジェームズ氏がメンバーに「エバーブライト・デジタル・ホールディングの株を大量に買ってください」と勧めた時、エフレメンカ氏は約2万ドル、つまり給与のほぼ半分に相当する金額を投資した。

7月中旬、エバーブライト・デジタル・ホールディングの株価は暴落し、1ドルを割り込んだ。エフレメンカ氏は昼休みに、自身の投資が消えていくのを目の当たりにした。「『こんなにひどい目に遭うなんて、自分が愚かだったとは思えない』と思いました。強欲が私たち全員を破滅させたのです」。エバーブライト・デジタル・ホールディングは問い合わせに回答しなかった。

エバーブライト・デジタル・ホールディングの株価が暴落

マイクロキャップ株は長らく詐欺や株価操作の温床となっており、メッセージアプリを通じたマイクロキャップ株をめぐる最近の騒動は、米国の規制当局や法執行機関の注目を集めています。犯罪者は時に「企業の株式を大量に購入し、銘柄選択クラブを通じて高値で売却する」ことがあります。FBIは7月、メッセージアプリを介したパンプ・アンド・ダンプ詐欺の苦情が前年比で300%増加し、米国の投資家の損失は数十億ドルに上ると推定されると報告しました。

先月、米国証券取引委員会（SEC）は、「国境を越えたパンプ・アンド・ダンプ詐欺」を調査するためのタスクフォースの設置を発表し、市場操作者の米国上場システムへのアクセスを助長した可能性のある引受証券会社を精査することを含めました。ドミナリは創業以来、38件のIPOのうち18件を中国本土または香港に本社を置く小規模企業に委託しています。中には、理由が不明瞭なまま米国に上場した企業もありました。例えば、3軒の火鍋レストランを経営する企業や、従業員わずか7人の高級時計販売会社などです。株式投資クラブによる宣伝を受けて株価が急騰したものの、その後急落した企業もいくつかあります。例えば、ヘルスケア企業のPheton Holdings Ltd.はIPO後に時価総額の80%以上を失い、Skyline Builders Group Holding Ltd.は今年7月に株価が1日で87%以上急落しました。

ウール社とドミナリ社が株式選択クラブと提携していたり、株価操作に関与していたりする兆候は見当たりません。同社は企業の上場支援に対する報酬で収益を得ていますが、通常は上場企業との取引には関与していません。ドミナリ社がSECの捜査対象となっているという証拠もありません。同社は、米国における小規模で投機的な中国企業の上場を支援した12の投資銀行のうちの1つに過ぎず、この行為は詐欺師たちを事実上幇助していました。

「これらの企業は上場を続け、株価は猛烈な勢いで上昇し、そして急落する」と、ミシガン州のマイクロキャップ投資家でブロガーのマイケル・グッド氏は述べた。「これは、一部の投資銀行がこれに目をつぶっているか、あるいはこれらの詐欺師たちが足跡を隠し、活動を隠蔽するのが非常に上手いことを意味している」

元同僚によると、ウール氏はここ数ヶ月、この期間が人生を変えたと周囲に語り、ドミナリ氏とトランプ一家との良好なパートナーシップが更なる可能性を開いたと語っていた。今年6月、ウール氏は中堅玩具メーカーが億万長者のジャスティン・サン氏が開発した仮想通貨の株主となるのを支援した。この取引にはトランプ一家は直接関わっていなかったものの、ウール氏はウォール・ストリート・ジャーナル紙に対し、エリック・トランプ氏が自身を支持し、サン氏に「ウール氏は素晴らしい人物だ」と伝えたと語った。

ウール氏はウォール・ストリート・ジャーナルに対し、ヘッジファンドや企業幹部らが突然、取引への参加を希望して連絡をしてきたとも語り、「今さら友達になりたいのか？そんなの必要ない」と付け加えた。

今年の韓国出張中、ウール氏は非公式の大使のような待遇を受けた。テレビのインタビューで米国の新政権に関する見解を述べ、元韓国国会議員のヤン・ギデ氏と面会した。ヤン氏はFacebookでウール氏を「韓国とトランプ大統領の架け橋になる可能性を秘めている」と評し、「次回米国にお越しの際はトランプタワーにぜひお立ち寄りください」とウール氏に誘われたと述べている。