原作者：ジェイソン・ネルソン

原文翻訳：ルフィ、フォーサイトニュース

まとめ

• イーサリアムは2025年12月にFusakaアップグレードを実施し、データスケーリング、DoS保護、開発ツールが導入される予定です。
• Peer Data Availability Sampling (PeerDAS) は、「完全なデータをフルノードに保存するのではなく、データをサンプリングする」ことで、データ ブロック (BLOB) のスループットを 8 倍に増加させます。
• 新しい EIP は、BLOB 料金を設定し、ブロック サイズを制限し、事前確認や P-256 署名のサポートなどの機能を追加します。

イーサリアムネットワークの次期メジャーアップグレードが間近に迫っています。Fusaka（Fulu-Osakaの略）と名付けられたこのアップグレードは、2025年12月にリリースされる予定で、イーサリアムの実行レイヤーとコンセンサスレイヤーの両方に大きな調整が加えられます。

Fusakaのアップグレードは、2022年の合併以来、イーサリアムにとって新たなマイルストーンとなりました。2023年のShapelaアップグレードでは、ETHのステーキングによる出金機能が導入されました。2024年のDencunアップグレードでは、プロトタイプのDanksharding技術とBLOBが導入されました。そして、2025年のPectraアップグレードでは、バリデーターの柔軟性とレイヤー2の相互運用性が向上しました。

ロードマップによれば、 Fusaka のアップグレードは、データ容量の拡大、DoS 攻撃への耐性の強化、開発者およびユーザー向けの新しいツールの導入を目的としています。

このアップグレードは広範囲にわたる影響を及ぼします。Fusakaは単なるマイナーパッチではなく、Ethereumのデータ可用性管理、BLOBの価格設定、トランザクション保護のメカニズムを再設計するものです。その成功は、ネットワークの分断やノードオペレーターへの過度の負担を引き起こすことなく、レイヤー2ネットワークの増大する需要に対応できるEthereumの拡張能力にかかっています。

PeerDAS: すべてのデータを保存するのではなくサンプリングする

Fusaka アップグレードのコア機能は、BLOB を処理する新しい方法である PeerDAS です。

イーサリアムにおいて、ブロブとは、DencunアップグレードのプロトタイプDanksharding技術で導入された一時的なデータパケットです。これにより、ロールアップは大量のトランザクションデータを低コストでメインネットに送信できるようになり、ブロックチェーンの状態を永続的に増加させることなくスケーラビリティを向上させることができます。

これにより冗長性は確保されますが、需要の増加に伴いボトルネックが発生する可能性もあります。現在のモデルでは、イーサリアムのすべてのフルノードは、チェーンにコミットされたすべてのレイヤー2ネットワークBLOBを保存する必要があります。

PeerDASはこのロジックを変更します。各ノードはBLOBの一部（約8分の1）のみを保存し、欠落したデータフラグメントを暗号再構成技術によって補完します。この設計では、ランダムサンプリングによってデータの可用性を検証し、エラー確率は10²⁰～10²⁴分の1と極めて低くなります。

この分散ストレージ方式により、イーサリアムは理論上、ノードオペレーターがハードウェアや帯域幅をアップグレードすることなく、BLOBのスループットを8倍に向上させることができます。圧縮されたトランザクションデータをBLOBで公開するロールアップは、この方式の最も直接的な恩恵を受けると予想されます。

ブロブの経済性と柔軟性

Fusaka のアップグレードでは、BLOB の価格設定と管理のメカニズムも刷新されました。

重要な変更点はEIP-7918で、BLOBに最低準備手数料が導入されます。現在のルールでは、実行層のガス料金が支配的になると、BLOBの価格がほぼゼロにまで下落し、非効率的な使用につながる可能性があります。最低準備手数料は、BLOBの使用に常にベースラインコストがかかるようにし、レイヤー2が消費するストレージと帯域幅に対して支払いを強いることになります。

もう一つのメカニズムはEIP-7892で、これはBLOBパラメータのみを調整するフォークを導入します。これにより、Ethereumクライアントは完全なハードフォークを行うことなくBLOBスループットを調整できるようになり、開発者が次回の計画されたアップグレードを待たずに、予測不可能なレイヤー2の需要に柔軟に対応できるようになることを目指しています。

攻撃と防御を強化する

スケールアップは、イーサリアムの攻撃対象領域の拡大も意味します。Fusakaのアップグレードには、極端なシナリオを制限し、ネットワークをDoS攻撃から保護するための一連の調整が含まれています。

• EIP-7823: MODEXP 操作の入力サイズを 8192 ビットに制限します。
• EIP-7825: トランザクションあたりの最大ガス消費量を 2²⁴ 単位に設定します。
• EIP-7883: 計算ワークロードにより適合するように、MODEXP の大規模インデックスのガス コストを改善します。
• EIP-7934: 実行層のブロック サイズを 10 MB に制限します。

これらの調整により、極端なトランザクションや非常に大きなブロックによって引き起こされるクライアントの過負荷、伝播の停滞、またはネットワークの不安定性のリスクが総合的に軽減されます。

ユーザーと開発者向けの新しいツール

Fusaka のアップグレードでは、使いやすさの向上にも重点が置かれています。

ユーザー向けには、EIP-7917 により事前確認のサポートが導入されます。これにより、ウォレットとアプリケーションはバリデータ提案スケジュールを事前に確認できるようになり、ユーザーは自身のトランザクションが後続のブロックに含まれることを確実に確認できるようになります。これにより、トランザクション確認に関する遅延と不確実性が軽減されます。

開発者にとって、Fusaka のアップグレードでは次の 2 つの重要な新機能が追加されます。

• CLZ オペコードは、暗号化アルゴリズムと契約の最適化に適しています。
• EIP-7951は、ネイティブsecp256r1（P-256）署名検証を提供します。これはハードウェアデバイスやモバイルシステムで一般的に使用される楕円曲線署名であり、これを組み込むことで互換性とアカウント抽象化機能が向上します。

これらの調整は、アプリケーション開発者の参入障壁を下げ、新しいウォレット設計とセキュリティ モデルへの道を開くことを目的としています。

ETH保有者が知っておくべきこと

通常のイーサリアムユーザーは、Fusakaのアップグレードに際して特別な対応は必要ありません。アカウント残高、トークン、アプリケーションは通常通り機能します。イーサリアムの公式サイトでは、ETHのアップグレードや送金を要求する詐欺にご注意くださいと強調されていますが、アップグレードに際してそのような対応は必要ありません。

主な責任はバリデーターとノードオペレーターにあり、彼らは実行層とコンセンサス層のクライアントを同期的にアップグレードする必要があります。調整は非常に重要です。バリデーターの同期がずれると、ネットワークがダウンタイムに陥ったり、一時的なフォークが発生したりする可能性があるからです。

一連のテストネットのアクティベーションが成功した後、Fusaka アップグレードは 2025 年 12 月 3 日に Ethereum メインネットで開始される予定です。

フサカ氏のアップグレードされたイーサリアムの将来

Fusakaアップグレードは、イーサリアムの統合以来のロードマップにおいて最も大胆な動きの一つです。これは、BLOB容量の増強、防御力の強化、開発ツールのアップデートという3つの主要目標を、単一の協調リリースを通じて同時に達成しようとするものです。

テストと開発は現在進行中で、クライアントチームはPeerDASのパフォーマンス、BLOB価格モデル、そして実行層とコンセンサス層のソフトウェア間の互換性に注力しています。アップグレードが成功すれば、Fusakaはイーサリアムにとって、レイヤー2ネットワーク導入の次の波への準備とスケーラビリティ向上におけるターニングポイントとなることが期待されます。