ETHとSOLから見るMEVの進化、取引順序付けの総合的なゲーム
- 核心的な見解:MEV(最大抽出可能価値)は偶発的な裁定取引行動ではなく、ブロックチェーンシステム内における構造的な権力分配の必然的な産物であり、その本質は取引順序付け権を巡る争いである。それは消滅させることができず、その形態と参加者はプロトコル設計(コンセンサスメカニズム、経済構造など)の進化に伴って絶えず移行し、混沌とした自由市場から制度化された階層的なゲームへと進化し、分散化、公平性、効率性に関する核心的な矛盾を引き起こし続けている。
- 重要な要素:
- 構造的根源:MEVは取引順序付け権という希少資源に由来し、順序付けに差異が存在する限りMEVは存在し、「code is law」の背後にある「power is law」の現実を明らかにしている。
- イーサリアムの進化:初期のマイナー/Searcherによる自由なフロントランニングの混沌とした市場から、Flashbotsによる規範化されたオークションとプライバシー保護の導入、そしてマージ後のPBSメカニズム下での専門化された階層的サプライチェーン(Searcher、Builder、Relay、Validator)へと進化し、MEVは制度化されたが、Builderの高度な集中化(上位5社が80%超のブロックを構築)という新たな問題ももたらした。
- Solanaの道筋:Jitoなどのインフラを通じてオークションメカニズムをクライアントに組み込み、プラットフォーム主導、効率優先の集中化されたオーダーシステムを形成し、スループットとノード収益を向上させたが、オンチェーンでのゲーム空間を圧縮し、寡占のリスクも存在する。
- 利益の移転であって消滅ではない:データによると、イーサリアムのマージ後、MEVの利益は約62%減少したが、これはMEV自体が衰退したというよりも、より長い専門化されたチェーンの中で利益が薄められ、移転した結果である。
- 将来の方向性:解決策は、MEVをより透明で公平かつ回避可能なものにする方向に向かっており、例えば信頼できるハードウェア(BuilderNetなど)による分散化された構築の実現や、権力のバランスを取るための暗号化メモリプールなどのプライバシー技術の探求が挙げられる。
- 核心的なパラドックス:MEVは分散化の理想と経済的現実の衝突を体現しており、市場効率の触媒であると同時に、権力集中の見えない回廊でもあり、そのガバナンスプロセスは絶えず新たな制度的中心を生み出している。
1. はじめに
定期的に、ブロックチェーン業界では「分散化」に関する大規模な議論が再燃します。理想のために弁護する人もいれば、これは最初から偽りの命題だったと諦める人もいれば、すでにパフォーマンス、収益性、規制に優しい現実主義路線に転向している人もいます。そして、なぜこの道を歩み始めたのかを忘れてしまっています。
しかし、私は常に一つの問題を本当に理解していないと感じています:私たちが「分散化」と言うとき、実際には何を回避しているのでしょうか? 何が中心化に向かうのを妨げているのか、そしてどのような論理が絶えず自己修正を促しているのでしょうか?
過去数年間、私は非常に皮肉な傾向を観察してきました——分散化を名乗るチェーンが、次第に新しい中央集権的代理人、新しい権力構造を生み出し、かつての挑戦者が新しい既得権益層に変わり、さらに悪竜に変わるというものです。
それらは企業でも銀行でも政府でもありません——マイナー、MEVサーチャー、ブロックビルダー、さらにはチェーンそのものである可能性があります。
MEV(最大抽出可能価値)を選んだのは、私の見解では、これがこのエコシステムの最も現実的で、最も赤裸々な鏡であるからです。
それはブロックチェーンを純粋な数学と暗号学の清潔な世界から、ゲーム理論、制度設計、さらには権力政治の現実的次元へと引き戻します。
チェーンがどれだけ分散化されていても、取引順序付けやブロックパッキングに差異化された権力が存在する限り、MEVは消えません。むしろさらに激化し、より隠蔽され、より体系化される可能性さえあります。
だからこそ、私はこの記事を書くことにしました。単にMEVを「解説」するためでも、既存の解決策をまとめるためでもなく、進化の観点からさらに一歩深く——批判的な視点で、MEVの背後にある構造的問題と進化メカニズムを整理し、それがどのようにして各チェーン、各技術アップグレードのサイクルにおいて、異なる役割、異なる制度形式で再出現し、姿を変えて舞台の中心に居座り続けるのかを理解したいのです。
私たちは皆「コードは法である」と言いますが、MEVは「権力は法である」というもう一つの現実を見せてくれます:順序決定権を握る者は、オンチェーン情報フローの配信権、取引実行の決定権、さらにはオンチェーン富の再分配権さえも掌握するのです。
この記事では、以下の問題から始めたいと思います:
- なぜMEVは偶発的な「裁定取引行為」ではなく、構造的現象なのか?
- それはプロトコル設計、コンセンサスメカニズム、オンチェーン経済構造の進化に伴って、どのように役割を移行するのか?
- イーサリアムのPBSとmev-boostは、結局何を「解決」し、何を残したのか?
- Solanaのような「高性能チェーン」の設計は、MEVの形態と参加者構造をどのように変えたのか?
- 私たちは本当にMEVを「撲滅」できるのか? それとも共存し、それを飼い慣らす方法を考えるしかないのか?
MEVを深く理解して初めて、私たちはブロックチェーンの制度的深層論理を真に理解できるのです。
これは公平性と効率性のバランスだけでなく、私たちの業界が「新自由主義的超高速金融実験室」に向かうのか、それとも依然としてある種の「オープン、中立、検閲耐性」という理想主義の火種を残すのかにも関わっています。
2. イーサリアム:ダークフォレストから階層化ゲームへ、MEVはどのように進化したか?
実際、MEVという言葉は誤解を招きやすいです。なぜなら、人々はマイナーがこの価値を抽出していると考えがちだからです。実際には、現在のイーサリアム上のMEVは主にDeFiトレーダーが様々な構造的裁定取引戦略を通じて捕捉しており、マイナーはこれらのトレーダーの取引手数料から間接的に利益を得ているに過ぎません。
「MEV」という言葉がいつ発明されたかを特定するのは難しいですが、確かなのは、それが天から降ってきたメカニズムではなく、「命名せざるを得なかった痛み」であったということです。
早くも2020年、Paradigmは後に古典となる記事『Escaping the Dark Forest』を書き、オンチェーン取引環境全体を暗流がうごめくダークフォレストに例えました。その「裁定取引を書き終えて送信しようとした瞬間、mempoolで伝播が完了する前に、他のボットが高いガス代でフロントラン(先回り)してしまう」という窒息感は、DeFiの深海域で活動したことのある誰もが知る恐怖です。
もしハッカーが愚かであれば、直接利益を得る方法を実行し、ハンターに高額のガス代でフロントランされてしまいます。
もしハッカーが賢ければ、この記事の著者のように、契約内契約(つまり内部取引)を使用して最終的に利益を得る取引ロジックを隠すかもしれませんが、残念ながら結末は『Escaping the Dark Forest』(https://samczsun.com/escaping-the-dark-forest/)のように成功せず、やはりフロントランされてしまいました。
これは、ハンターたちがオンチェーン取引の親取引だけでなく、すべての子取引も分析し、シミュレーションによる利益推論を行っていることを意味します。さらに、ゲートウェイコントラクトのデプロイロジックも検出し、同様に再現しています。そしてこれはわずか数秒で自動的に行われたのです。
これ以前、人々は漠然とオンチェーン取引が平等ではないと感じていたかもしれませんが、体系的にまとめられてはいませんでした。そして「MEV」という言葉の出現が、初めてこの構造的不平等に明確な名前を与えたのです。
現在は消滅した「Time Bandit Attack」というパターンがあります。イーサリアムがPoSに移行する前、単一ブロックをリオーガナイズ(再編成)することで利益が極めて高い場合、マイナーが連合してより高いブロックチェーンを構築し、既に出された帳簿を置き換えるモードが存在しました。例えば、『Escaping the Dark Forest』(https://samczsun.com/escaping-the-dark-forest/)の著者がオンチェーンに960万ドルの脆弱性を発見し、最終的にプライバシー取引を通じてブロックを出したケースです。ホワイトハットの支援があったにもかかわらず、彼らが一貫して懸念していたのは、取引漏洩によるフロントランだけでなく、このような悪意のあるマイナーが発見し、大規模なリオーガナイズを強制的に構築するタイプでした。(リオーガナイズは珍しいと思わないでください。筆者がBSCノードを運用していた時、このようなスーパーノードモードであっても、ブロック高が不十分な場合には1日5回のリオーガナイズがありました)。

『救出に成功した25700 ETH』(https://samczsun.com/escaping-the-dark-forest/)
これが、MEVが分散化と緊張関係を生む理由でもあります。
本来、私たちはチェーンが公開、透明、非仲介的で、誰もが取引に参加でき、身分ではなくルールのみを見ると考えていました。しかし現実は、あなたはアドレスを持つことはできても、順序決定権を持つとは限りません。取引を送信することはできても、他人より先にパッケージ化されるとは限りません。あなたは一般ユーザーであっても、ある「サーチャー」は常にあなたを使って稼ぐことができます。この「構造的に欠如した公平性」は、本質的に「権力のずれ」です:順序決定権はユーザーの手にありませんが、ユーザーのコストと運命に影響を与えます。
そしてこのずれこそが、イーサリアム上のMEVメカニズムが進化してきた物語の出発点なのです。
2.1 第1段階:混沌としたMEV自由市場(2018–2021)
初期のイーサリアムチェーン上では、MEVは統一されたルールのない戦場でした。
マイナーは取引のパッケージングを担当し、ユーザーは取引を送信してタイムリーにオンチェーンされることを願うだけでした。理論上は誰もがガス代競争を通じて公平にオンチェーンできますが、実際にはすぐに、もしメモリプール(mempool)を監視し、誰かが裁定取引を送信した直後にそれを複製して少しガス代を上乗せして先にパッケージ化できれば、裁定利益をただ乗りできることに気づく人々が現れました。
これがいわゆる「フロントランニング(先回り取引)」、サンドイッチ攻撃の前奏曲です。
この時、最初に活躍した役割はサーチャーです——彼らは狼の群れのように、常にmempoolのすべての取引を監視し、結果をシミュレーションし、自動的に裁定機会を判断し、非常に高い頻度で自分が構築したフロントラン取引パッケージを送信し、マイナーに優先的にパッケージ化されるよう争いました。
マイナーも手をこまねいているわけではありませんでした。当初はより高いガス代を受け取るだけでしたが、次第に一部のマイナーはサーチャーを飛び越えて、自分自身でMEVボットをデプロイして裁定取引に参加し、他人を迂回させ始めました。
こうして私たちはいわゆる「マイナーによる自己MEV抽出」の段階に入りました。さらに悪いことに、一部のマイナーはパッケージング権を販売することさえしました——「利益を分け前としてくれれば、あなたの取引を1番目に並べられる」と明示的に価格を設定したのです。
この時期の最も顕著な特徴は:
- 順序決定権が階層化されておらず、マイナーがコンセンサス役割であり同時に順序決定役割でもあった。
- MEVは混沌としており、誰もがフロントランでき、奪い合う自由市場を形成した。
- ユーザーには発言権がなく、彼らの取引情報が公開されること自体が一種の剥奪であった。
Paradigmの『Dark Forest』が話題を呼んだのは、文体がSF小説のようだったからだけでなく、本質を捉えていたからです:ブロックチェーン取引はブロック化される前、実は「情報は公開されているが確定できない宙吊り状態」であり、MEVの本質はこの「確定性の遅れ」を利用して構造的利益を得ることである、という本質を捉えていたからです。
しかし、このままではうまくいきません。マイナーのフロントラン、サーチャー同士の害し合い、ユーザーの失血により、チェーン全体のユーザー体験は悪化していました。
そして、次の段階に入りました。
2.2 第2段階:Flashbotsと「抽出可能な公平性」の試み(2021–2022)
Flashbotsは、一見論理的でないが非常にイーサリアムらしい解決策を提案しました:フロントランが避けられないなら、フロントランを規範化されたサービスにしてしまおう、と。
こうしてFlashbots Auctionシステムが誕生しました——サーチャーはもはやmempoolを一人で狙って投機するのではなく、自分が構築した「取引バンドル」をFlashbotsに提出し、Flashbotsは複数のバンドルをブロックに組織化してマイナー(後にバリデータ)にオークションにかけ、マイナーはどのブロックが最も儲かるかを選択するだけでよくなりました。
このメカニズムは少なくとも2つのことを解決しました:
- 責任の階層化:サーチャーは利益案の提案を担当し、ビルダー(Flashbots)は取引の組織化を担当し、マイナーはブロック生成を担当する。責任が明確になり、マイナーが投機的裁定取引に参加する誘因も減少した。
- ユーザープライバシーの保護:多くの取引はもはや公開mempoolに入らず、プライベートチャネル(Flashbots Protect)を通るようになり、公開伝播によるフロントランを回避した。
この時、MEVは「制度化された採掘」段階に入りました。Flashbotsは中核インフラとなり、組織化されたサーチャーとビルダーの大多数がそれを通じてブロック構築に参加しました。
しかし、これは問題が終わったことを意味しません。
なぜなら、Flashbots自体が中央集権的なシステムであり、かつそのルートを通る取引のみがフロントランされない可能性があるため、「公平性」は依然として解決されておらず、ただ別の方法で隠されただけだからです。
そして真の転換点は、「イーサリアムのマージ」からもたらされました。
イーサリアムのマージとは、そのコンセンサスメカニズムがPoWからPoSに移行するアップグレードを指し、最終的なマージ案は、マージ前のイーサリアムのインフラを最も軽量に再利用し、ブロック生成決定のコンセンサスモジュールのみを分離することを選択の根拠としました。
PoSでは、各ブロックは12秒ごとであり、以前の変動値ではなくなりました。ブロックマイニング報酬は約90%減少し、2 ETHから0.22 ETHに低下しました。
これはMEVにとって非常に重要で、以下の2点があります:
- イーサリアムのブロック生成間隔が安定した。以前の3-30秒という比較的離散的なランダムな状況ではなくなり、MEVにとっては長所と短所が半々である。サーチャーはわずかに利益のある取引を見つけるとすぐに送信する必要がなくなり、より良い取引シーケンスを蓄積し続け、ブロック生成前にバリデータに委託できるようになったが、サーチャー間の競争も激化した。
- マイナーのインセンティブが低下し、バリデータがMEV取引オークションを受け入れる意欲が高まり、わずか2-3ヶ月でMEVの市場占有率が90%に達した。
実際の影響も顕著でした。
- マージ前の1年間、MEV-Exploreから算出された平均利益は22MU/M(21年9月開始、22年9月マージ前終了、数値はArbitrageとliquidationモードを統合)
- マージ後の1年間、Eigenphiから算出された平均利益は8.3MU/M(22年12月開始から23年9月末終了、数値はArbitrageとSandwichモードを統合)
最終的な収益の変化の結論は:上記データの統計からMEVに属すべきではないハッキングイベントを除外した後、全体の収益率は対比して62%も顕著


