オリジナル記事：シッダールタ・シュクラ、ブルームバーグ

原文翻訳：Saoirse、Foresight News

要点

• VisaとAlliumのデータによると、2025年現在までにステーブルコインの取引量は5兆ドルに達し、決済件数は10億件に上る。
• ステーブルコインを使用して異なる法定通貨を交換する場合、売買スプレッド、交換手数料、仲介手数料、スリッページなど、通常の取引所と同様のコストが発生します。
• 外国為替インフラ企業アビークロスのCEO、マイク・ロバートソン氏は、新興決済ツールとしてのステーブルコインの限界について次のようにコメントした。「暗号通貨の世界では、コードとテクノロジーですべての問題を解決できると考える人もいます。しかし、外国為替の世界では、この考えはナイーブです。」

ステーブルコインへの期待は最高潮に達しているものの、フィンテック業界のベテランたちは依然として、こうしたトークンは新興の決済ツールとしては限界があると考えている。

VisaとAlliumのデータによると、2025年のステーブルコイン取引額はこれまでに10億回の決済で5兆ドルに達しており、2024年全体の総額5.7兆ドルに迫る勢いだ。2024年11月にドナルド・トランプ氏が米国大統領に選出されて以来、米ドルなどの既存通貨の価格を厳密に連動するように設計されたこれらの暗号通貨の時価総額は47%増加し、2,550億ドルに達した。

ステーブルコインは、特に国境を越えた決済において、より迅速、安価、そして効率的な未来をもたらす可能性を秘めています。データはこの可能性が徐々に実現しつつあることを示唆していますが、この技術が何十年にもわたって外国為替を悩ませてきた問題を解決できるかどうかについては、依然として懐疑的な見方が残っています。

ステーブルコインを別の法定通貨（例：ユーロから香港ドル）に交換する場合、通常の交換と同じコストの多くが発生します。

「暗号通貨の世界では、コードとテクノロジーがあらゆる問題を解決できるという認識があります。しかし、外国為替の世界では、それは全くのナイーブです」と、外国為替インフラ企業アビークロスのCEO、マイク・ロバートソン氏は述べた。「通貨にはそれぞれ独自の力学があります。そして、ほとんどの銀行や決済機関は、手数料ではなく、外国為替取引で利益を上げています。」

ステーブルコインの取引量は昨年に比べて2倍になると予想されている

出典：Visa、Allium

注: 2025年のデータは7月時点のものです

外国為替コストには通常、売買スプレッド、為替手数料、仲介手数料、スリッページが含まれます。これらのコストは国境を越えた暗号通貨取引にも存在し、特に流入と流出の際に顕著になる可能性があり、ステーブルコイン支持者の「低コスト」の主張に疑問を投げかけています。

ステーブルコイン決済の成長は、主に2つの応用シナリオによるものです。1つは、従来の金融機関がカバーしていない国境を越えた取引を簡素化することであり、もう1つは新興市場での決済サービスです。

ステーブルコイン決済インフラに特化したスタートアップ企業BVNKは、英ポンドと米ドル間の決済経路にはあまり注力していない。BVNKのアジア太平洋地域マネージングディレクター、サガール・サルバイ氏によると、同社はスリランカからカンボジアへのルートなど、「代替」の決済経路に重点を置いているという。

「この種のプロセスは通常、複数の仲介者を必要とし、コストがかかるだけでなく、時間もかかります。ステーブルコインはこのプロセスを簡素化します。現時点では必ずしも安価ではありませんが、資金をより迅速かつ効率的に活用できます」と彼は述べた。BVNKの年間取引量は現在約150億ドルである。

BVNK は、企業がステーブルコイン事業を営むのを支援することに焦点を当てた唯一のスタートアップ企業ではありません。

2022年に仮想通貨業界が低迷した後、コンデュイットはステーブルコイン決済分野に進出しました。同社はステーブルコインを活用し、ユーザーがブラジルのPixなどのローカルシステムを通じて送金し、SEPA （欧州単一ユーロ決済圏、欧州連合（EU）およびその他の複数の欧州諸国をカバーする標準化された決済システム）を通じて支払いを受けられるようにしました。CEOのキリル・ゲルトマン氏によると、同社は現在、年間100億ドルの決済処理を行っています。

シンガポールに拠点を置くThunes社とカナダに拠点を置くAquanow社も、ステーブルコインの発行会社や企業と協力し、支払いの効率化に取り組んでいる。

「ステーブルコインの台頭はビジネスチャンスだ」と、4月に1億5000万ドルを調達したThunesのCEO、フロリス・デ・コート氏は述べた。「インフラは変化するかもしれないが、人々は決済の『ラストマイル』を完了するために、常に現地通貨とウォレットを利用する必要があるだろう。」

ベンチャーキャピタリストがステーブルコインへの関心を再燃させる

出典：CBインサイト

注: 2025年のデータは7月23日時点のものです

これらの数字は、既存の決済事業者の規模と比較すると取るに足らないものに見えるかもしれません。Visaの最新の年次報告書によると、Visa単体で2024年には13.2兆ドルの決済を処理する予定で、これは同時期のステーブルコイン取引総額の2倍以上となります。

しかし、市場の急速な成長は決済大手を非常に警戒させている。彼らはいわゆる「ステーブルコイン・メザニン」モデルを模索している。これは、2つの法定通貨の間にステーブルコインを導入し、国際銀行間金融通信協会（SWIFT）などの従来の銀行ネットワークを迂回し、数分以内に取引決済を実現するものだ。彼らは、米ドルの流動性が少なく、従来のシステムが非効率な市場に焦点を当てている。

2024年10月、Visaは、トークン化された預金やステーブルコインなど、法定通貨に裏付けられたトークンを銀行が発行、破棄、転送できるプラットフォームを立ち上げました。

米国で最近可決されたGENIUS法は、世界最大のステーブルコイン市場に明確な規制枠組みを提供し、銀行や決済機関がより安心してこの分野に参入することを可能にします。これにより、規制当局はステーブルコイン発行者に対して同様の規制を策定しようと、世界的な競争を繰り広げています。

「指数関数的な成長の始まりが見え始めたばかりだ」とBVNKのサルバイ氏は述べた。「過去5年間に築かれた基盤は、今後12ヶ月で爆発的に成長するだろう」